戦後~高度経済成長期から現在に至るまで家族の形態は様変わりし、未婚者や子どもがいない夫婦、一人っ子家庭も珍しくなくなりました。
ご近所づきあい等地域社会での人間関係も希薄になっている中で、子ども世代に迷惑はかけたくないという意識から『終活』という言葉は団塊の世代が老後を迎える2009年頃より急速に広まりました。
「終活」とは
日本には昔から「立つ鳥跡を濁さず」という美意識・価値観があります。
『終活』は残された人の負担を減らすためにするものであるとともに、当事務所では自分らしい生き方の先にある「自分らしい最期」を迎えるための準備と考えています。
「まだ20~30年生きるんだ!終活なんて縁起でもない!!」という方もいます。
しかし、平均寿命は年々延び続けていますが、ウイルスや自然災害と隣り合わせの現代日本に生きる我々に、突然その日が訪れても何の不思議もありません。
まったく整理することなく亡くなってしまい、家族が悲しみに暮れる中、伝えていなかった借金が次々に発覚したりしたら涙も止まってしまうかもしれません。
また、お墓や葬儀の準備、財産や持ち物の整理等に渡る終活は、想像以上に重労働ですので、具体的に自分の最期を意識し出した頃には気力・体力が衰えていて、これからの重要なことを決定するのはなかなか難しくなります。
終活を始めるのに早すぎることはありません。
家族のことを想うのであれば、元気なうちに少しずつやっていくべきです。
終活をキッカケに後見制度、遺言書、相続等の法律を知るいい機会にもなります。
一口に終活といっても葬儀・墓の準備等の自分の死後の手続きだけでなく、医療、介護、年金、財産管理、住まい、これからの暮らし方などすべてを含み、いわば「人生後半期のライフプラン」で、考えるべきことはたくさんあります。
その中で自分がもし認知症になったら等の不安もあることでしょう。
「私の悩みは葬儀屋さんに聞いたらいいのか、ケアマネージャーさんの方がいいのか、弁護士・司法書士さんの方が力になってくれるのか」
悩みも多種多様なので、どこに相談するべきか迷われることと思います。
そこで司法書士・任意後見人という立場でどのような終活のご相談を受けることがあるのか、見守り契約中に受けた終活のご相談の一部をご紹介します。
遺言書の作成のお手伝い
「遺言書」と聞いて、あなたはどんなものをイメージされますか?
「今までありがとう。私の亡き後もお母さんの言うことを聞いて家族仲良く暮らしてください。」という、残された人への想いを綴ったものでしょうか。
「自宅の不動産は長男に相続させる。その代わりに○○銀行の預金は二男に相続させる。」という、財産分けの内容が書かれたものでしょうか。
これらはどちらも正式な遺言書です。
その中心になるのは、自分の死後、誰がどの財産を相続するかで争いにならないように財産の分け方を指示するものですが、付言事項といって自由に相続人へのメッセージを残すこともできるのです。
遺言書は現在の法律上7種類ありますが、通常作成されるのはほとんどが「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」のどちらかになります。
その中でも自筆証書遺言は費用がかからず、思い立った時に好きなように簡単に作成でき、内容を秘密にできる点がメリットです。
しかし、厳しい要件があり、それらを満たさないと無効になってしまうので注意が必要です。
全文自筆、日付・氏名の記入、押印等、挙げてみると特に難しいものではありませんが、いざ自分で作成するとなると、本当にこれでいいのか、自分の思う通りに相続させることができるのか、不安になる方が多いです。
そのような方のため、当事務所が見守り契約の訪問時に遺言書の書き方の指導をしたり、完成した遺言書を遺言執行者という立場でお預かりすることもあります。
※令和2年7月より自筆証書遺言を法務局に保管してもらえる制度がスタートしました。家庭裁判所の検認が不要になる等のメリットが多いため、当事務所でも積極的にオススメしております。詳しくは個別にお問い合わせください。
死後事務委任契約について
葬儀、埋葬、死亡届などの諸手続は「死後事務」といいます。生前のうちに葬儀の方法を決め、お墓を準備しておくことを『終活』とイメージしている方も多いと思います。
頼りになる子どもや相続人がいる方は、生前にご自身の希望を伝えて安心してすべておまかせできることでしょう。
しかし、生涯独身で相続人がいない、または兄弟がいるけど皆高齢で細々とした手続きをお願いできそうにない、という方に、司法書士・任意後見人にその死後事務をまかせることができるのです。
これを「死後事務委任契約」といいます。
「あれ?私が亡くなったら後見人さんがその辺りの手続きをやってくれるんじゃないの?」
と思った方もいるのではないでしょうか。
後見人は本人さんが亡くなった後は相続人への財産の引渡しが主な業務で、葬儀、埋葬、死亡届などの諸手続は、法律上任意後見人の事務の範囲外になるのです。
そのため任意後見契約とは別に死後事務委任契約を結んでおく必要があります。
また、遺言書に誰々に死後事務をお願いしたい、と記載しておくこともできます。
しかし、これはあくまで本人の希望として扱われ、法的な義務が生じるわけではないので、指名した方が引き受けてくれるかわかりません。
また、葬儀や納骨がすべて終わってから遺言書が発見されるようでは意味がありません。
死後事務は、毎月面談をし、現在の生活状況とこれからの生き方を相談している任意後見人が適任といえます。
当事務所ではライフプランの作成の際に、お客様の希望を丁寧に聞きながら死後事務の内容を決めていきます。
これから先の長い人生で価値観や考え方が変わり、葬儀の方法や死亡時に連絡する友人知人等の内容を変更したいと言われることはよくあります。
契約というと、少し堅苦しく聞こえるかもしれませんが、その都度よく話をお聞きし、契約書の作り直しも柔軟に対応しています。
お気軽にお問合せ下さい
いかがでしたでしょうか。
遺言書と死後事務が終活の代表的なものですが、その他には法人経営や個人事業主の方の場合、事業承継や廃業等の手続きも税理士と連携して行っています。
現在様々な自治体や葬儀社、信託銀行や一般企業が終活の支援サービスを展開しています。
しかし、終活は、法律や自分以外の誰かに強制されるものではありません。
司法書士・任意後見人もあくまでお客様の希望する生き方をサポートする役割です。
当事務所とお客様の関係は、お客様が亡くなるまで、そして亡くなってからも続きますので、お客様の今後の生き方の選択肢を少しでも増やしていけるようお手伝いさせていただいています。
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